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今年は「タイカン」の発売を控え、満を持して100%EVの市販が注目されるポルシェ。とはいえドイツ車の常として、初お目見えのテクノロジーを載せた「元祖」は高額で、買える層も限られますから、向こう10年はむしろ動力源の一部を電化したモデル、つまりハイブリッド&プラグインハイブリッドが販売の主流になることが予想されます。

ちなみにポルシェにおけるハイブリッドの元祖といえば、2011年発表の918スパイダー(2013年から918台のみ市販、新車価格は約1億円だった)でして、そのテクノロジーがよりデモクラタイズ(民主化)された現行モデル最高峰が、「パナメーラ4 ターボS Eハイブリッド」というワケです。

民主化されたとはいえ、その車両価格は税込2831万円也。まぁ筆者も含め世間の大半には絶対値としてアウト・オブ・レンジかもしれませんが、918スパイダーの頃から比べると「よくぞここまで安くなった!」という価値観の方も相対的にいるワケです。しかも918スパイダーはペタンコの2シーター・スーパースポーツでしたが、パナメーラ4 ターボS Eハイブリッドときたら後席も荷室も備えて大人4人が快適に乗れるスポーツ・サルーンですから。日常に使える実用性という点でも、領域を広げているんですね。

4リッターV8ターボ・エンジンだけを見ても、550psに740Nmもの最大パワー&トルクはスーパーカー並み。そこに電気モーターの136ps&400Nmが加わります。制御の関係もあって純粋に加算トッピングではありませんが、パワーユニット全体としてじつに680ps&850Nmを発揮。かくなる怪力を受け止める駆動システムは無論4WDです。スペックだけ眺めていると、どれだけ荒々しいのかとビビりますが、実際にアクセルを踏むと、拍子抜けするほどジェントルな加速感に驚嘆させられます。無論、バッテリーが充電された状態では100%電気のみでの話です。

ブレーキキャリパーの蛍光イエロー仕立てが、いかにもPHEV(プラグインハイブリッド)でございます風情で、筆者は好きじゃなかったのですが、ナビ画面を見るとゼロ・エミッション、つまり電気だけで走れる範囲が蛍光イエローに囲われ示されます。これがけっこうわかりやすいですし、何よりブレーキング時の熱エネルギーを回生してバッテリーに貯め込むプロセスをイメージしやすくなります。カタログでは14.1kWhのバッテリーで約50㎞のEV走行が可能とありますが、5連メーターの右内側では、刻一刻と走行状況に応じた航続可能距離を、電気とガソリン込み、それぞれで表示します。いわば排ガスゼロ走行でエコ走り中の満足感が得られるんですね。

通常走行でバイパス道路などで車速50~60km/hぐらいに達すると、エンジンがニュルンとかかって介入してきます。ですが、この動力源の切り替わりが3速や4速で繋がるので、恐ろしく滑らかでショックらしいショックをまったく感じません。しかも高速道路で巡航中の下り坂などでは、スッとコースティングに入って、エンジンがサボれる局面ではサボりさえします(笑)。怪力のようでジェントル、しかもズルいほど賢い。

そしてアクセルをガッツリ踏むと・・・・終わりがなさそうなほどの本気加速とともに、V8ターボがヴロロロ~ンとドスの効いた爆音を奏でます。電気モーター分のトルクと相まって加速感はマジ暴力的。それでも、ワインディングでは2.1トンものボディがヒラリヒラリと舞うように曲がっていくのです。エコとハイパフォーマンスという、いずれも完成されすぎ!な二重人格キャラに、なぜか口端だけでニンマリしたくなることでしょう。

ひとつだけ残念なのは、日本仕様の急速充電は、オンボードチャージャーの230V/32Aという規格が最大で、最速でも2.4時間かかるところ。街場の無料普通充電でバッテリー残1/3ぐらいで230V/10Aの普通充電に差したら、満充電まで6時間弱とのことでした。とはいえ、一晩で十分に満充電できるレベルですし、「充電がないと動けなくなるEVのほうがPHEVより交通弱者」という認識の欧州的な判断による、現段階での上手い落としどころといえるでしょう。


写真・文/南陽一浩

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