2010~2018年デカ厚受難期
クラシック回帰ブームも追い風となり
昔ながらの小ぶりサイズが復権
2000年代後半からBeginはミリタリーやワーク、アメカジと土臭いファッションを推していましたが、2010年代に入るといち早く「次は英国モノが来る」と予想。以前からテコ入れしていたマッキントッシュやバブアーといったクラシックな英国アウター、英国伝統の堅牢なブライドルレザーを用いたホワイトハウスコックスなどをさらに猛プッシュします。すると予想どおりに英国トレンドが到来。スーツなどのドレス方面もすっかりクラシックな英国調がメインストリームになっていきます。こうしたクラシック回帰の流れが今に至るまで継続していることはご承知のとおりです。
そんななか、時計も昔ながらの小ぶりなサイズを求める人がファッション業界を中心に増加。タイメックスのキャンパー、ハミルトンの手巻きカーキといったミリタリー出自の小径時計もスタイルのハズしとして人気を博します。
2017年2月号

さらに2010年代半ば頃からシンプルかつクリーンなファッションが台頭。いよいよ「デカ厚時計でオラつくのはいかがなものか」というムードが蔓延していきます。この頃から時計ブランドも復刻系の新作なんかで40mmを切る小ぶりのモデルを作るようになっていきます。
そして2018年のBegin掲載時計のサイズ平均はついに40.03mmにまで低下。Beginはそのときどきのファッションに合う時計を紹介していますから、この調子でいくと2019年のサイズ平均は40mmを切るかもしれません。
ただ時計界全体を見渡すと、まだまだ40mmを大きく超えるモデルが主流なんですよね。理由として考えられるのは、高級時計のメインの市場がアメリカやヨーロッパだから。ガタイの大きな欧米人の腕にはやっぱりデカイ時計のほうが似合うんですよね。だからブランドとしてはデカ厚時計を作り続けるしかないわけ。あと、高級時計の主な買い手が40代以上の年配層ということも微妙に関係しているかも。寄る年波で老眼が進み、あまり小さな時計だと時刻を確認しづらいから(汗)。このあたり、Beginを長年読んでくださる方も実感しているんじゃないかと。
そんなこんなで、Beginとしては今後もデカ厚時計は衰退しないと考えています。袖口で邪魔にならない小ぶりな時計は、確かにその人をセンスよく見せます。でもファッションによってはガツンと袖口でインパクトを効かせたいときもあるはず。デザインやメカニズム、ブランドストーリーなどの生産背景なんかに惚れ込んだのなら、今あえてデカ厚時計を買うのも全然アリでしょう。
いずれにしろBeginは、名付け親としての責任から、今後もデカ厚時計の動向を注視する所存。もし小ぶりの時計がメインストリームに返り咲いたら、アマノジャクな人は必ず逆張りするはずですから、将来、本誌あるいはe-beginで「帰ってきたデカ厚」なんて特集があるかもしれませんよ。
2010~2018年
Begin誌面で紹介された年間の時計本数と平均ケース径
2010年
サイズ表記されている時計219本の平均は41.44mm。北欧時計の特集も。この頃から小ぶりな北欧ブームスタートか?
2011年
サイズ表記されている時計226本の平均は41.29mm。
2012年
サイズ表記されている時計163本の平均は41.6mm。
2013年
サイズ表記されている時計188本の平均は41.44mm。
2014年
サイズ表記されている時計239本の平均は41.31mm。
2015年
サイズ表記されている時計185本の平均は41.24mm。
2016年
サイズ表記されている時計197本の平均は40.61mm。ついに40mm台に低下。
2017年
サイズ表記されている時計141本の平均は40.32mm。
2018年
サイズ表記されている時計142本の平均は40.03mm。
たぶん、2019年は40mmを切るかも!?
Begin誌面で紹介された時計のケース径の変遷
※1998~2005年の誌面で紹介している時計はケース径が計測されたものが少なく、あくまで当時に計測されていたモデルのみの平均値で、参考データとなります(当時は特別デカいモデルしか計測していなかった)。
文/吉田 巌(十万馬力)