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ファーストダウン×フリークス ストアのショートダウン イメージ

ファーストダウンを羽織れば、オレはイケてると確信できた。

横浜ルミネのフリークス ストアで店頭にディスプレイされたファーストダウンを見たとき、心に甘酸っぱい記憶がよみがえった。

17歳の冬、コンビニのバイト代を貯めて、初めて自分で買ったダウン。当時のカリスマであり、某ストリート誌のスナップページに“カッコマン”として掲載されたこともある友人Tの兄貴も着ていた憧れの一着だ。

「寒さの厳しいニューヨークで流行っているダウンだから、最高に暖かいんだ」。都内の有名大学に通うTの兄貴は自慢げに語った。

手に入れてからというもの、毎日のように着た。チャンピオンのリバースウィーブとディッキーズのチノーズ、クラークスのワラビー。ちょっと大きめなLサイズのファーストダウンを羽織れば、オレはイケてると確信できた。

ファーストダウン×フリークス ストアのショートダウン ロゴ

そして初めて付き合った彼女とのデートの情景が頭に浮かぶ。頼りにしていたのは、当時のバイブル「ホットドッグプレス」に載っていた恋愛マニュアルとこのダウン。

木枯らしが吹く井の頭公園で、二人はボートに乗った。辺りは静かで、人もまばら。真冬だというのに、バーバリーチェックのミニスカートに厚底ブーツを履いたいわゆるアムラーの彼女が「寒い」と言い出した。

とっさにフロントジップを開けて、震える彼女をダウンの中に引き寄せた。――今だ! そっと口を彼女の唇に近づける。唇に軽くタッチした後、舌を差し入れてローリング、そして激しくレロレロしてから、ツツーッと横滑り……。

雑誌に載っていた“基本のキス”をやってのけたが、今思えば無理がある。彼女は少し怪訝な顔をしていた……。初めてのキスは、スーパーモンキーズがテレビCMをしていた板ガムのマスカット味がした。

その後、彼女とはささいなけんかをして別れ、着古したダウンも手放してしまった。井の頭公園のスワンに乗ったカップルが別れるという都市伝説を知ったのはその後だ。

だが、あの日着ていたダウンの暖かさは、彼女の肌の温もりとともにはっきりと覚えている。

その日、23年ぶりにファーストダウンに袖を通した。鏡に映る自分は中年男の顔になっていて、当時着ていたモデルとも違うけれど、軽くハリのある生地の質感やふんわり弾力のあるダウンの温もり、ゆったりとしたボックスシルエットは当時のままである。すぐに購入を決めたのは言うまでもない。

(文/’90s青春世代代表・ライター39歳)
 

覚えてる?

FIRST DOWN/ファーストダウン
FIRST DOWN/ファーストダウン

’90年代にNYで誕生。ダウンをパンパンに詰めたふっくらシルエットの“バブルダウンジャケット”は、著名ミュージシャンが着用するなど、当時のNYを象徴するダウンに。日本では’90年代半ばに大ブレイク。一時休眠した後、2018年秋冬、満を持して再スタート。

 

FIRST DOWN×FREAK’S STORE/ファーストダウン×フリークス ストアのショートダウン

FIRST DOWN×FREAK’S STORE
ファーストダウン×フリークス ストアのショートダウン

フリークス ストアの別注モデルはアーカイブのクライミング用ダウンをベースにしたショートダウン。表地は撥水性のあるドライタッチな素材で、中身は700フィルパワーのグースダウンを使用。2万9800円。(フリークス ストア渋谷)

 
※表示価格は税抜き


[ビギン2019年1月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。

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