「ん~くさい!…もう一本」生プラセンタ原液100%の化粧品は肌の青汁だった[前編]【ビギニン#51】

時代のニーズや変化に応えた優れモノが日々誕生しています。心踊る進化を遂げたアイテムはどのようにして生み出されたのか?「ビギニン」は、そんな前代未聞の優れモノを”Beginした人”を訪ね、深層に迫る企画です。

「メイクやスキンケアは女性がするもの」一昔前はそう思われていましたが、今や男性もメイクやスキンケアをすることが当たり前になりつつあります。ある調査によると、メンズコスメの国内の市場規模は2022年までの5年間でおよそ1.5倍の376億円にまで増大しているのだとか。そんなコスメ市場にあって、Beginが注目したのは胎盤から抽出される成分「プラセンタ」。プラセンタには豊富な栄養や成長因子が含まれており、細胞を活性化し自然治癒力を高める効果があるとされ、同成分が配合された化粧品も数多く販売されています。

今回は、そんなプラセンタ化粧品のなかでも加熱処理を行わない「生プラセンタエキス」を用い、しかもそれを100%配合した(つまり原液のまま!)化粧品「Placentity(プラセンティティ)」を開発した、2人のビギニンのお話です。

今回のビギニン

WOMANHOOD 竹下 聡さん

生プラセンタ100%の化粧品Placentityの開発を担当。機械工学を学び、システムエンジニアや上場事務などの多彩な職歴を経て、生プラセンタを研究、抽出に成功。大手企業からの誘いを断り、もう一人のビギニン、吉村さんと出会いWOMANHOOD(ウーマンフッド)での開発をスタート。生プラセンタを配合した化粧品「viviaso(ヴィヴィアソ)」に続き、「Placentity」を世に送り出す。

Idea:
上場事務から一転、プラセンタ抽出研究へ

生プラセンタ化粧品Placentityの開発を担う竹下さん。これまで化粧品に携わる経験があるのかと思いきや、販売元として自ら開発を手掛ける前は上場会社の株式事務や総務人事、SEの仕事をしていたと言います。

大学で機械工学を学び、卒業後は住宅メーカーの社内エンジニアとして基幹システムの構築に従事。会社が上場を控えており、社内のことを熟知していることから総務へ異動。上場事務IR担当として株主や投資家に対して、企業の財務状況や投資のために必要な情報を提供していく業務を行います。ところが、思わぬことで上場が廃止。その後、フィルターの開発会社へ転職。ここで出会ったフィルターの技術が、Placentityにつながる転機となりました。

「フィルターの開発会社に入社し、前職の経験から上場事務を担当する予定だったのですが、結局株式上場が頓挫してしまって。30名いた技術者も3名だけになりました。フィルターの技術では他社に勝る優位性があったので、それを武器になんとか事業を存続させたいと思い営業を続ける日々。その甲斐あって、フィルターを使って水質改善を図りたいなど仕事が増えていきました。そしてある日、このフィルター技術をプラセンタで使えないかと依頼が飛び込んできたんです」

プラセンタの従来の抽出方法では、「酵素分解加工(薬品水に原料となる胎盤を入れ分解)によるエキス化工程」、「加熱殺菌による滅菌工程」を経る必要がありました。しかし、この方法での抽出はプラセンタの良い成分が失われたり、不純物が混ざる可能性があるのだとか(詳しくは後述)。そこで白羽の矢が立ったのがこのフィルター技術でした。北海道の企業からの依頼を受け、生プラセンタの抽出に着手、竹下さんも技術者として研究に没頭するようになります。

生プラセンタ100%のPlacentity。左は5本入り、右は20本入り。

加熱せずにプラセンタを抽出する。前代未聞の取り組みに注目が集まりましたが、既得権を守りたい業界からは多くの批判もあったと言います。

「プラセンタと聞いてもよくわからないと思うかもしれませんが、そういう方は魚をイメージして欲しいです。一般的なプラセンタは加熱処理をしているので、焼き魚。私が販売しているプラセンタは加熱をしていない刺し身なんですよね。新鮮な成分がそのまま抽出できるのですが、周囲の協会などからはネガティブキャンペーンを張られたこともがありました。逆にこの技術を独占的に活用したい大手企業から一緒に開発をしないかとお誘いいただいたこともありますが、お断りしましたね」

その後、竹下さんは独立、さらに改良を重ねた独自の抽出法を確立し、非加熱でのプラセンタの抽出法を完成させ、特許も取得。2014年、念願の生プラセンタ配合の化粧品が発売されることになったのです。

Trigger:
プラセンタ本来の成分をそのまま肌に

さて、竹下さんが用いたフィルターによるプラセンタ抽出方法とはどのようなものなのでしょうか。画期的な仕組みについて見ていきましょう。

プラセンタを直訳すると「胎盤」のこと。ここで言うプラセンタとは、胎盤に含まれている栄養のことを指しています。豊富な栄養素が含まれていることから、細胞再生療法にも使用されています。

しかし従来のプラセンタの抽出方法である「酵素分解加工(薬品水に原料となる胎盤を入れ分解)」と「加熱殺菌」には次の弱点が存在します。

・水に漬けることで成分が希釈されてしまう
・酵素や薬品などの不純物がプラセンタに混ざってしまう
・プラセンタの成分や構造が分解(壊)されるため異なる物質となる
・熱殺菌することにより成分が死滅する

抽出されたプラセンタ。温度管理された冷蔵施設内で点滴のように一滴一滴時間をかけて抽出される。抽出開始してから最初の数日でとれた新鮮な「ファーストドリップ」をPlacentityでは使用している。

そこで竹下さんが行ったのが、水も熱も加えずにプラセンタだけを抽出する「0℃チルドショック製法」です。胎盤を冷凍し、解凍する。この工程を繰り返すことによって胎盤内にあるプラセンタを含むエキスを取り出します。

そして加熱処理に代わって行うのが、フィルターによる滅菌です。「0℃式ナノフィルター」と呼ばれる独自のフィルター技術で精製することにより、良い成分を壊すことなく抽出することが可能となりました。

竹下さんと運命的な出会いを果たす吉村さん。

非加熱生プラセンタの抽出技術を確立した竹下さんですが、化粧品業界のしがらみもあって、プラセンタエキスは思うように売上を伸ばすことはできませんでした。プラセンタエキスの品質よりも「プラセンタ配合」という宣伝文句さえ使えればいい。そう考えるメーカーが多いことに竹下さんは落胆します。

そんなとき、取引先からある人を紹介されます。それが当時、熊本で船舶用の通信機器の販売や太陽光発電関連の事業を手掛けていた吉村太志さんでした。この出会いによって”生プラセンタ100%”という嘘みたいな化粧品の開発が動き出すことになります。

コスメ初心者のためのプラセンタQ&A

聞き馴染みがない方も多いプラセンタ。一体どのようなものなのか、竹下さんに解説していただきました。

Q1.そもそもプラセンタとは? どのような効果が期待できますか?

プラセンタは胎盤から抽出されるエキスで、10数種類のアミノ酸やビタミン、ミネラル、酵素など豊富な栄養成分と成長因子が含まれています。成長因子とは、細胞の成長や免疫力、再生力をつかさどるものです。肌の再生力、保湿力を高めるほか、抗炎症、抗酸化作用、メラニン色素の生成を抑えシミ予防などにも効果が期待できるとされています。

Q2.胎盤ってヒトの胎盤が使われているのですか?

医療の治療薬ではヒト由来のプラセンタ製剤が使われていますが、化粧品では豚や馬などの動物性プラセンタが一般的です。Placentityでは、専属契約した福岡の提携牧場から直接仕入れた豚の胎盤のみを使用しています。

Q3.ニオイが気になると聞いたことがあります。本当のところはどうなんでしょうか?

Placentityは胎盤から抽出した生プラセンタ100%の化粧品ですので、ニオイがないと言えば嘘になります。ですが、当社の開発した生プラセンタはニオイを極力抑えていますので、他社のものと比較すると劇的に生臭さは少ないです。最初は少し気になっても、3回も使えば慣れると思いますよ。ハハハッ!

後編:ニオイをバラの香りで克服。…でも売れない に続く

Placentity(プラセンティティ)
非加熱生プラセンタエキスを100%配合したプラセンタ化粧品の最高峰。福岡県の提携牧場から直接仕入れた豚の新鮮な胎盤を使用し、「0℃チルドショック製法」と「0℃式ナノフィルター」の独自製法で、プラセンタがもつ豊富な栄養素や成長因子を壊すことなく抽出している。最初の2週間は毎日使用し、その後は3日に1回の使用を推奨とあるが、ここぞというときの肌の栄養ドリンク的に使うのも手。夜の洗顔後に乾燥やシミ・シワ・毛穴などが気になる部分に指で塗布する。保存料を使用していないため要冷凍保存。使用期限は製造より3年。左からプラセンティティ 5(1.2ml×5本入り)1万6500円、プラセンティティ 20(1.2ml×20本入り)6万6000円。

(問)WOMANHOOD
https://shop.womanhood.co.jp/

※表示価格は税込みです


写真/椿原大樹 文/梨木由美

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