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応援金がタドれる ガーナの児童労働をなくそうチョコ

数年の間に世界を一変させる可能性を秘めた「DX(デジタルトランスフォーメーション)」にフォーカスする連載「プロジェクトDX」。時代の変化やニーズにDXを通じて応える優れたサービスの開発者やその現場を訪ね、未来を変える可能性やサービスに込められた思いを紹介していきます。

今回フォーカスするのは、“児童労働の予防と撤廃に取り組むカカオ生産者”へチョコの購入を通じて資金援助ができる「タドれるチョコ」プロジェクト。売り上げの一部を社会貢献活動に用いるサービスは珍しいものではありませんが、本プロジェクトが画期的なのは、ブロックチェーンで記録を残すことにより、購入者が支払った応援金がちゃんと相手に届いたことを証明できる点にあります。プロジェクトの意義を、発案者である株式会社「UPDATER」の村松尚子さんに伺いました。

プロジェクトDX 〜挑戦者No.11〜「タドれるチョコ」で児童労働をなくそう

株式会社UPDATERの村松尚子さん
「タドれるチョコ」を手掛ける村松尚子さん。UPDETERのオフィスにて。

エレベーターを降りれば、正面の壁一面に無数のコンセント(ちゃんと使えます)。そこからオフィスに入ると今度は、ウルトラ怪獣「エレキング」の巨大なフィギュアが来客を迎える──。訪れたのは、株式会社「UPDATER」。ブロックチェーンを駆使した“顔の見える”再生可能エネルギー電力事業「みんな電力」を展開する企業です。

株式会社UPDATERの社内

「弊社には“どこから購入した電気を今どのくらい使っているか?”というのを30分単位で可視化する、ブロックチェーンを用いたトラッキングシステムがあります。この技術を電気だけに使うのはもったいないのでは?という意見が社内であり、そこで生まれたのが『TADORi』という事業でした」

お話を聞いたのは、事業の1つである「タドれるチョコ」を発案した村松尚子さん。現在販売中の第2弾「ガーナの児童労働をなくそうチョコ」では、板チョコ1枚につき100円相当(3枚1セットなので300円相当)の応援金を児童労働の予防と撤廃に取り組む生産者へ届け、それがきちんと届いたことをブロックチェーンを用いて証明する仕組みを構築。ここには「子どもたちの幸せを応援するのはやぶさかじゃないけれど、そのお金、ホントに相手に届いてる?」といった“善意への疑念”を払拭することで、社会貢献活動をサポートする狙いがあるといいます。皆さんも街頭で募金箱を持つ人々を前に、あらぬ疑念が頭をよぎったこと、あるでしょう? 人間だもの。

応援金がタドれる ガーナの児童労働をなくそうチョコ

バッテリーに関する別のプロジェクトをともに進めていたNGO法人『ACE』を通じ、カカオ栽培の現状について話を聞いたのが「タドれるチョコ」立案のきっかけだったと村松さん。

「ガーナでは学校へ行かずにカカオ農園へ下働きに出される子どもたちがたくさんいる。自分たちの消費行動が悪いことを促進しているという事実がショックで……。だから、“これを買えば大丈夫!”というのを示そうと思いプロジェクトを立ちあげました」。

株式会社UPDATERの村松尚子さん
データ分析が大好き。エクセルは大好物という村松さんの前職は銀行員。UPDATERへの入社動機は「面白いデータがたくさんありそうだったから」だとか。

ブロックチェーンの強み=信用、を活かす

簡単におさらいすると、ブロックチェーンとは取引履歴などのデータを暗号化して複数の場所で分散管理し、すべての取引を過去から一本の鎖のように繋げて記録する技術のこと。極めて改ざんがしづらいこの技術を用いれば、モノやお金、電気にいたるまで、誰から誰の手を経て最終的に誰の元に渡ったのか?というのを正確に辿ることができます。

「当初は、カカオ豆がどの村の生産組合からどの港を通ってどの港に着いて……というのをブロックチェーンで辿ろうと考えていたのですが、当社の規模ですと難しいことも多く行き詰まりました。そんなとき、エンジニアから『カカオ豆じゃなく、消費者からの応援金が現地に届くまでを辿ることにも意義があるんじゃない?』と逆転の発想を聞いて。それで、カカオ商社の立花商店さんを通じて応援金を現地生産者団体へ届け、その履行をブロックチェーンで担保する──という現在の形になったんです」。

なお、ブロックチェーンで履歴を辿るのはお金そのものではなく、お金を可視化するべくUPDATERが発行した「TADORiトークン」(1円=1TADORiトークン)。外貨送金の取引に伴いトークンの移動も記録する仕組みで、記録は「タドれるチョコ」のWebサイト上でも確認することができます。将来的にはモバイル通貨などを活用し、お金そのものの取引をブロックチェーンに記録する構想もあると言います。

株式会社UPDATERの村松尚子さん
一般的にブロックチェーンの取引証明には、いち取引あたり1000円ほどの手数料が必要とのことですが、UPDATERは電力事業で培った0.1円ほどでこれを完遂できる特許技術を保有。「タドれるチョコ」プロジェクトにも応用していると言います。

2022年に発売し晴れて完売した「タドれるチョコ」第1弾では、“ガーナの児童労働なくせるチョコ”、“ベネズエラの原住民女性まもれるチョコ”、“フィリピンの希少カカオそだてるチョコ”と、3つの産地のチョコを1セットにして販売。味わいの違いを楽しみながら、背景の異なる問題を抱え、その解決に尽力するカカオ生産者へ支援ができるというものでした。

翻って第2弾は、“ガーナの児童労働をなくそうチョコ”と題して、児童労働の改善のみにフォーカス。ダーク、オレンジピール、ピスタチオの3つの味が楽しめるようになりました。また「消費者の想いも届けたい」と、Webサイトを通じて応援金の使い道を“苗木の購入”、“備品の購入”、“啓蒙教育活動”から選べる──という新たな試みにも挑戦しています。

ブロックチェーンが関心のきっかけになれば

TADORiのタドれるチョコ
躍動感あふれるカラフルなパッケージには、埼玉県川口市のはみぬま福祉会「工房集」に所属するアーティスト3人の作品を使用。「アートパラ深川という芸術イベントで作品を拝見したときに、生まれて初めて“絵って解釈とかしなくていいんだ、感じればいいんだ”という体験をしたんです。そのときの感動が強烈だったので、声を掛けさせていただきました」と村松さん。

“ガーナの児童労働をなくそうチョコ”の価格は、3枚1セットで税込み4212円。うち300円相当が応援金ということを踏まえても、板チョコとしてはかなり高級な部類に入ります。しかし、児童労働のないフェアな労働への対価、品質向上に勤しむ優れた労働への対価を払おうとすれば、原価が上がるのは当然。付加価値も考えれば、適正な価格といえるでしょう。

「弊社のロットだけでインパクトを出せるものではないことは重々自覚しています。でも今回の取材のように、ブロックチェーンを入り口にして、カカオ生産をとりまく環境に関心をもっていただけることもある。労働環境の改善に尽力されている人たちがいる──というのを、少しでも伝えられたら嬉しいですね」。

そう謙虚に語る村松さんですが、もし冒頭で述べたように“募金箱を持つ善意の人々を前に抱く疑念”を多くの人が感じてしまっていて、そのせいで皆、社会貢献の一歩を踏み出したいのに出さないでいるのだとしたらどうでしょう? 「タドれるチョコ」のような、ブロックチェーンにより安心を担保された応援金の周知が進むことで、一歩、また一歩と社会貢献に踏み出す人が増え、やがて大きなうねりになることもありうるのではないのでしょうか。

なお「タドれるチョコ」は、「TADORi」のオンラインサイトや、バスケットボールチーム「川崎ブレイブサンダース」のホームゲーム会場およびクラブ公式オンラインサイト、「ファーストハンド」の店舗にて購入することができます。

応援金がタドれる ガーナの児童労働をなくそうチョコ
3つある味の中でも「私はプレーンなダーク味がお気に入りです」と村松さん。

え、肝心のチョコの「味」はどうかって? そこはカカオの本場ガーナの、それも、子どもたちの環境改善に尽力する誠実な人々が育てたカカオ豆で作った高級チョコのこと。美味しいに決まっているじゃないですか。カカオ含有率71%と濃厚にして苦味がそこまで強くないのは意外な特徴で、一粒ほおれば、上質なカカオ原料ならではのコクや風味が口いっぱいに広がります♡ というわけで皆さんもどうぞ、さりげなく社会貢献しながら、至福の余韻をお楽しみくださいませ!

TADORiのタドれるチョコ

応援金がタドれる ガーナの児童労働をなくそうチョコ【3枚セット】
4212円(うち300円相当が応援金)

TADORi https://www.shop.tadori.jp/products/123

※表示価格は税込み


写真/宮前一喜 文/秦 大輔

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