スタイリスト 小沢 宏さんをめぐる、これからのシン・スタンダードとは #096
「“型にはまらない楽しさ”を鮮烈に教えてくれたマルチボーダー」
スタイリスト 小沢 宏さん
大食いで雑食というのが、僕のファッションとの付き合い方。らっきょうのように苦手なものもあるけれど、美味しそうな匂いを嗅ぎつけてモードな服も着れば、オーセンティックな服も着ます。
僕が信頼しているイギリスのECサイト「エンドクロージング」で買ったジャミーソンズのボーダーニットは、モロ後者ですね。
日本では珍しいXXLサイズがあったのも購入の決め手。昨今はゆったり着るのが、トレンドというよりもはや普通のこと。昔からある何てことのないアイテムでも、大きく着るだけで急にフレッシュに映るのが楽しいですよね。
それとジャミーソンズというとフェアアイル柄のフォークロアな印象が強いですが、マルチボーダーだとちょっぴり現代的な印象がある。配色はおそらく工場にある毛糸をニッターの気分で適当に組み合わせたものだと思うんだけど(笑)、だからこそ着る側もこの色を拾って……とか考えないほうがいい。
そもそも拾えない色がないくらいの多色だから、派手に見えて意外と何にでもハマりそう。首に巻くとか肩に掛けるみたいな使い方も、柄が効いて面白いかもしれません。
ことオーセンティックな服にはこう着るべきという“型”があったりしますが、同時に僕は“知らない強さ”というのがあると思う。もちろん知識は大切だけど、そこから解き放たれるのも、今のファッションムードなんじゃないかな。
jamieson’s[ジャミーソンズ]
マルチボーダーニット
スコットランド・シェットランド島で1983年に創業したニットの老舗の一着。パキッとした配色にモダンな印象が滲むが、その風合いは古きよきシェットランドニットそのものだ。海外のインターネット通販で1万8000円前後。
スタイリスト
小沢 宏(おざわひろし)
1964年生まれ。スタイリストとして活躍する傍ら、自身のブランドを手掛けるなど多方面で活躍。本年5月、故郷である長野県上田市に“雑誌の3D化”を掲げるショップ「エディトリアル ストア」をオープン。
[ビギン2022年12月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。