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みなさん、もうバギーズ・ショーツ、穿き始めていますよね!? もしくは今年こそ買ってみたい、という方もいらっしゃることでしょう。アクティブなフィールドウェアから休日のショーツスタイルまで活躍する、パタゴニアの大定番ですから。そして1982年の誕生から40周年を迎えた2022年、バギーズ・ショーツは革新的なアップデートを遂げました。そこで以前、「パタゴニアの人気フリース6選【徹底GUIDE】」でもお世話になった、パタゴニア製品を知り尽くす細野さんに再び直撃取材! さらにはバギーズ・ショーツを愛してやまない、MR.&MISS.バギーズの声もお届け♡ これさえ読めば愛される理由がわかる完全保存版です。

【EVOLUTION】
「ネットプラス」で生まれ変わった
バギーズ・ショーツ

名作に歴史あり。まずは細野さんに、バギーズ・ショーツの誕生について聞いてみました。
「1982年にパタゴニアの創業者、イヴォン・シュイナードはデパートで、機能的に見えたマカオ製のナイロンショーツを購入しました。ただアウトドアスポーツを通じて太ももを鍛え上げていたイヴォンにとっては、いささか細身。そこでパタゴニアの製品開発チームにこのショーツを渡し、ルーズフィットのショーツを作るように依頼したそうです。またイヴォンはテニス好きで、サーブの際、ボールを2つ収納できるショーツが欲しかった。そしてできたのが、裾がややワイドにフレアして動きやすく、テニスボールが2つ入る深いメッシュポケットを備えたバギーズ・ショーツだったのです。バギーズとは、ゆったりという意味の『baggy』からきています。デザインは当時から現在まで、ほぼ変わっていません」。

またイヴォンは製品開発の際に、「より機能的な生地を」というリクエストも出しました。「耐久性、速乾性、肌触りのよさも求めていて、はじめは“コットン60%×ナイロン40%ほどの混紡生地”で作られました。その後、“ポリエステルを混紡したトライブレンド”になり、1994年には“コットン58%×サプレックスナイロン42%のオリジナル素材、ヴェンチュラクロス”を採用。サプレックスナイロンはナイロンの特徴である耐久性と速乾性に優れていながら、しなやかでナチュラルなタッチ、表情も特徴で、1997年には“サプレックスナイロン100%”に。同時にメッシュライナーはリサイクルポリエステル100%に切り替わりました。バギーズ・ショーツは機能的な生地も備えていたことで、’80年代から水陸や性別、世代を問わずに愛用されて、’90年代にはパタゴニアには欠かせない定番となりました。一方で、パタゴニアは1993年にリサイクルポリエステルを導入し、1996年にコットン素材をオーガニックコットンに100%切り替えるなど、積極的に環境への負荷を抑えた素材への切り替えを進めていました。ただバギーズ・ショーツは2017年まで、リサイクルではないバージンナイロンに頼っていました」。

その理由は、ナイロンの耐久性や速乾性、軽量といった機能性の維持だけでなく、そもそもリサイクルナイロンを作ることが困難だったんだそう。
「リサイクルポリエステルはペットボトルやプラスチック製品を作る工場の廃材などが原料。資材が豊富でわりと作りやすかった。ただナイロンの場合は、そうした工業レベルの資材が少なく、リサイクルする素材を調達することが困難でした。そしてナイロンは素材の特性上、硬い素材は作りやすいものの、再び柔らかいリサイクルナイロン生地にすることができなかったんです」。そういえば、2015年頃、リサイクルナイロンを使ったクルーザーを販売されてましたよね? たしか漁網をリサイクルしてたような……。「そうそう、ああいうスケートボードのような硬いものは作れたんですよ。じつはその漁網を使ったリサイクルナイロンが、今シーズンのバギーズ・ショーツの大きなアップデートなんです!」

遡ること2012年、パタゴニアはカリフォルニアのブレオ社が、南米の漁業コミュニティから海に廃棄された漁網を集め、リサイクルナイロンを開発していることを知ります。
「ブレオ社のメンバーはもともとサーファーで、チリのサーフポイントを訪れた際、使い古した漁網がそのまま海に廃棄され、自然に帰ることなく有害なプラスチック汚染をもたらし、海洋動物にも深刻な影響を与えていることを知り、漁網を回収してリサイクル原料にしようと考えたそうです。これは環境だけでなく、漁師町に雇用を生み、地元の漁業従事者に補足的収入を提供するというメリットもありました。そしてパタゴニアはベンチャー基金であるティンシェッド・ベンチャーズを通じ、2014年からブレオ社に投資を行い、パタゴニアの開発機関「FORGE」(フォージ)もリサイクルナイロン素材の開発に参加します。ただ先程お話に出たクルーザー、そしてサングラスやサーフボードのフィンといった硬いリサイクル素材は作れたものの、柔らかい生地として製品化することがとても困難でした。だからバギーズ・ショーツは2017年までリサイクルナイロンを使うことができませんでした」。

聞けば、ナイロンの耐久性を備えつつ、柔らかい生地を作ることは、一度諦めたこともあったんだとか……。「しかしフォージのメンバーの一人が、個人的にコツコツと諦めずに開発を続けていたそう。するとこれが実り、まずは2018年春夏のキャップのツバの芯地として使うことに成功しました。そして同シーズンのバギーズ・ショーツでは、バージンナイロンと混紡して製品化することができました」。なるほど、ちょっとずつ柔らかい素材開発に成功していったんですね。「2018年の春から、ブレオ社の漁網をリサイクルしたナイロンは『ネットプラス』として商標を取得。そしてバギーズ・ショーツは、翌2019年から漁網以外の素材も使いながら、リサイクルナイロン100%で作られるようになりました。その後も素材開発は続いて、2022年にはネットプラス100%になり、軽く丈夫で、速乾と撥水の機能をキープしながら、より柔らかくしなやかに、穿き心地も進化を遂げたのです」。

【SEASONAL】
ファッションではなく
意味のあるロゴや色柄について

素材の進化も見ものですが、バギーズ・ショーツといえばシーズンごとのカラバリも楽しみの一つ! 
「色はデザイナーがシーズンのコンセプトに基づいて決めることが多いですね。2022年は新型コロナの影響もあって、『故郷から内省する』がテーマ。パタゴニアの地元、カリフォルニア州ベンチュラの自然からインスピレーションを受けているものが目立ちます。例えば『Clean Currents Patch: Lago Blue』(上の写真右)はベンチュラの前にあるピアポント湾から着想を得ました。またバギーズ・ショーツでは定番のフィッツロイのP6ロゴがお馴染みですが、『Clean Currents Patch: Lago Blue』にはバギーズ・ショーツがネットプラスをモチーフにした漁網が描かれています。上の写真、左の『GPIW Crest: Surfboard Yellow』はベンチュラにあるパタゴニアの本店、『グレート・パシフィック・アイアン・ワークス』の50周年を記念したもの。バギーズ・ショーツでこうしたロゴのアレンジは、今までにないものですね」。

「また柄ものでは、写真上のブルー、『Dirt Bags: Stone Blue』は、クリーンクライミング50周年のコレクションで使われたグラフィック。アロハ調の花柄のなかに、チョックやナッツなど、クリーンクライミングを象徴するギアが描かれています。写真下の『Climb Hike Surf: Tigerlily Orange』は、2018年に大好評だった、イヴォンたちのパタゴニアへの旅を描いたファンフォグ柄をイメージしたもの。それぞれのモチーフはファンフォグとは違いますが、どれもさりげなくパタゴニアにまつわるモチーフを描いていて、こちらもアイコニックなデザインになっています」。


バギーズ・ショーツ/1982年からほとんど形、デザインが変わっていない、パタゴニア、ひいてはアウトドアシーンきっての名作ショーツ。速乾性の高いナイロンを使い、ウエストにストリングス、裏地にはメッシュライナーを備え、フィールドからスイムパンツとしてもオールラウンドに活躍する。コンパクトな5インチのレングスだが、テニスボールが2つ入るよう深く取られた両フロントポケット、スナップボタン付きのバックポケットを備え、見た目以上に携帯性に優れる点も使い勝手がいい。また2022年からは環境に悪影響のない、過フッ素化合物不使用の撥水コーティング、PFCフリーDWR加工を施している。各7920円。

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