今季はとくに豊作ってことで「ジャーマントレーナー」ストーリー解説
じつは知るほどに楽しいストーリーが盛り沢山!
ジャーマントレーナーってなんとなく知ってるけど……という方のために、出自から人気の理由をおさらいしてみましょう。
ルーツは70年代からある西ドイツ軍の屋内用トレーニングシューズ。軍用ゆえのシンプルに機能を追求したデザインで、丈夫で屈曲性に優れるヴァルカナイズド製法×レザーアッパー、トウのスエードの補強、グリップに優れたガムソールが特徴です。
《余計なロゴなどがない超シンプルなデザインも特徴!》
こちらはヴィンテージのジャーマントレーナー。海外ではGermanArmy Trainerとも称され、頭文字を略してGATとも呼ばれる。軍用品らしく余剰なデザインはなく、タンにナンバリング刻印のみ。教官用の黒はヴィンテージ市場でもレアな存在だ。(スタッフ私物)
ちなみにヴィンテージでは色は白が圧倒的に多く、レアな黒もあります。これは白が訓練生、黒が教官用だったから。また当初はアディダスとプーマが生産を担い、デザインも双方が手掛けたといわれています。
当時、アディダスやプーマの工場で作られていた(写真は現行品)
ただ主な工場は東欧最大の靴の生産国、スロバキア。だから今日も、スロバキア製のジャーマントレーナーが王道と認識されてるんですね。
ところでジャーマントレーナーって、他の定番スニーカーと違っていろんなブランドから発売されてますよね? これはなぜなら、販売目的のない軍用品で、商標登録をしていないから。だからスニーカーとして大人気となってからは、さまざまなブランドのジャーマントレーナーがあるわけです。
そんな人気の立役者となったのが、日本のシューズメーカー、タナカユニバーサル(※1)。そして世界的デザイナー、マルタン・マルジェラ(※2)です。
ドイツ軍のジャーマントレーナーは1994年に支給が終了し、スロバキアの生産工場も閉鎖してしまいます。しかしタナカユニバーサルが工場を再稼働し、残っていた機械や型紙、ソールやナイフなどを使い、98年に復活させたのです。
するとパリの展示会でこれを見たマルタン・マルジェラがとっても気に入り、タナカユニバーサルに自分たちのジャーマントレーナーの生産を依頼します。
しかしタナカユニバーサルは「自由に作っていい」と回答。そして02年にマルジェラのコレクションで発表すると、ジャーマントレーナーはスニーカーとして世界的に人気が爆発したのです。
ちなみにマルジェラは自分たちのジャーマントレーナーを、「レプリカ」と称しています。これはタナカユニバーサルの「自由に作っていい」との回答に感銘を受けた、マルジェラの敬意の表れだともいわれているんですよ。
自身のジャーマントレーナーにはリスペクトの意が込められている
《メゾン マルジェラでも定番となったジャーマントレーナー》
ヴィンテージのジャーマントレーナーを愛用していたといわれるマルタン・マルジェラ。ちなみにレプリカタグはヴィンテージの価値観を大切にしたアイテムに使われる。タグのProvenance(起源)にはオーストリアとあるが、これはプーマのオーストリア工場で作られた、ヴィンテージをベースにしたことを意味している。
そして今となってはさまざまなシューズブランドからファッション業界も、ジャーマントレーナーにゾッコン♡ マルジェラに続いて数々のメゾンもジャーマントレーナーを手掛けたほか、リプロダクション オブ ファウンドのように忠実なスロバキア製と、上質な素材でアップデートを行うシューズブランド。
リプロダクション オブ ファウンド
トレラン用のビブラムソールを使ったオルフィックや、レザーソールでドレスアップしたエンダースキーマとフット・ザ・コーチャーなどのアレンジモデルも大豊作。
左/オルフィック 中/エンダースキーマ 右/フット・ザ・コーチャー
さらにMHL.(※3)といったファッションブランド、ビームスなどセレクトショップオリジナルにまでラインナップしているほど。
またシップスでは、大のジャーマントレーナー好きというバイヤーの瀬谷さんが、激レアなヴィンテージを買い付けてお店で販売していたりも。
シップス バイヤー
瀬谷俊法さん
洋服屋だった父の影響を受けてファッションに開眼。洋服、スニーカーから美容にも精通し、24歳にしてバイヤーに就任した敏腕だ。
「いま一番のスニーカーはアディダスのBWアーミー、ネイビー!」―瀬谷さん
《お気に入りの1足!》
「70~80年代のクラシカルなスニーカー、なかでもジャーマントレーナーが大好物♡ ヴィンテージのジャーマントレーナーを持っていましたが、ついに履き潰してしまい……。ただ心の穴を埋めてくれたのがBWアーミー。オリジナルにないネイビーも最高です!!」
ジャーマントレーナー(ヴィンテージ)
「これは滅多に見られないグレーアッパーなんですよ! 白よりも色が濃いめなので、上達した訓練生に支給したのかな(笑)? レアな色を見つけるのもジャーマントレーナーの楽しみですね」
加えて最近では、ジャーマントレーナーだけでなく、世界各国のトレーニングシューズに人気が飛び火。クラシカルなブリティッシュトレーナーやフレンチトレーナーをはじめ、近代の訓練用シューズを生産する、ダッドシューズライクなマグナムといったブランドも注目の的になっています。
左/ブリティッシュトレーナー 右/フレンチトレーナー
いわばスニーカーシーンのなかでも、とりわけ群雄割拠な熱いカテゴリー。次なる旬のキーワードは“トレーナー”。識者たちは、すでにそう見ています。
【タナカユニバーサル】(※1)
1942年創業、シューズ企画や販売を行うメーカー。ジャーマントレーナーを復活させ、マカロニアンやセボといった自社ブランドのほか、メゾンとのコラボも多数手掛けている。
【マルタン・マルジェラ】(※2)
ベルギー出身のデザイナーで、メゾン マルジェラの創設者。ジャーマントレーナーをはじめ、仏陸軍M‐47トラウザーズの素晴らしさを世界に知らしめたことでも有名。
【MHL.】(※3)
英国を代表するデザイナー、マーガレット・ハウエルのカジュアルライン。女史が影響を受けたワークウェア、ユニフォームをもとにしたベーシックな服や、靴と鞄も支持が厚い。
今季はとくに豊作な[ジャーマントレーナー]
《品格も抜群の都会派トレーナー》
adidas Originals for EDIFICE[アディダス オリジナルス for エディフィス]
別注BW ARMY
エディフィスでは、高級感がただようシボ革でアッパーを統一。さらにロゴやソールをホワイトの同系色にまとめることで、ミニマルかつ都会的な雰囲気にアレンジしている。1万4300円(エディフィス 新宿)
《70sのソールパターンも忠実に再現》
PUMA[プーマ]
アーミートレーナーOG
ジャーマントレーナーにプーマのアッパーのアイコン、フォームストライプをプラス。ハンドボールシューズなどでも活躍した、’70年代中頃のソールパターンを採用している。1万2100円(プーマ お客様サービス)
オリジナルを忠実に再現する精度の高さはピカイチ!
《高級感を高めつつ履き心地も快適に進化》
REPRODUCTION OF FOUND[リプロダクション オブ ファウンド]
ジャーマンミリタリートレーナー
80年代のモデルをベースにしたスロバキア製。アッパーは上質なイタリアンフルグレインレザー&スエードを使用。セレナソールとEVAミッドソールを組み合わせ、クッションと耐久性も向上している。2万8380円(アイ ファウンド)
激レアかつオシャレなグレーワントーンアッパー!
[ヴィンテージ]
ジャーマントレーナー
通常の白ジャーマンは、スムースレザーのアッパーが白で、トウのスエードがグレーがかっているが、こちらはスムースレザーもほんの〜りグレー。レアな価値だけでなく、シンプルにワントーンの色使いが洒落てる! 2万8380円(シップス 渋谷店)
ヴィンテージの証のナンバリングも
今季はあちこちでジャーマンバブル!
《アンダー1万円のお値打ちジャーマン》
B:MING by BEAMS[ビーミング バイ ビームス]
ジャーマントレーナー
ナローなコットンシューレースなど、オリジナルのデザインやディテールをとことん再現しながら、なんと8000円台! コスパで選ぶならこれで間違いなし。8690円(ビーミングライフストア by ビームス 横浜ポルタ店)
《英国の人気ブランドによるほっこりジャーマン》
MHL.
MHL アーミー トレーナー
オリジナルシューズが人気のMHL.も、ジャーマントレーナーをリリース。自然な革の質感を残したグレインレザーとヌバックを使い、同色で彩ることで一段と温かみある表情に仕上がっている。3万6300円(MHL.)
《山道にも対応するトレイルジャーマン》
ORPHIC[オルフィック]
G/R トレーナー
多彩なミリタリーパーツをMIXして、今どきなトレランシューズのシルエットに。内蔵ジェルによって衝撃を吸収するビブラムソールを使い、ランニングシューズばりの履き心地も実現している。3万6300円(アルファ PR)
《キャンバスアッパーを組み合わせて軽やかに♪》
WALSH[ウォルシュ]
トーキョー
クラシックな雰囲気の英国訓練用シューズ、ブリティッシュトレーナーをアレンジしたデザインが特徴。洗練のフォルムも老舗ウォルシュの真骨頂だ。地元の英国・ボルトン製。2万6400円(カメイ・プロアクト)
レザーソールの変わり種も
Hender Scheme[エンダースキーマ]
マニュアル インダストリアル プロダクツ 05
インダストリアルな軍用品をあえて手工業で作るおもしろさをテーマに、木型から手作り。カウレザー×ゴートスエードのシックな表情も、同ブランドならではのレザーワークだ。4万8400円(ブルージーブルーバイアーク)
アウトソールにはブランドを象徴するヌメ革を使用
FOOT THE COACHER[フット・ザ・コーチャー]
ノンスポーティースニーカー
スニーカーアッパーと、革靴のソール&製法を組み合わせたノンスポーティースニーカーの新作。程よくオイルを含んだレザーアッパーの光沢にも惚れ惚れする。5万9400円(ギャラリー・オブ・オーセンティック)
履くたびに足に馴染むレザーソール
世界各国のトレーナー系も人気
イギリス《キャンバスアッパーは軍用車仕様!》
J&S FRANKLIN[J&Sフランクリン]
ブリティッシュ アーミー トレーナー
英陸軍トレーニングシューズをベースに、アッパーにはランドローバーの軍用車にも使われる、強靭で雨にも強いワックスドコットンを使用。経年変化もお楽しみ。1万2100円(グラストンベリーショールーム)
イギリス《新兵全員が着用する最先端トレーナー》
HI-TEC[ハイテック]
マグナムU.S.T サービス トレーナー
現役の英国軍の訓練用シューズ。通気と撥水性を兼ね備えるアッパー、バクテリアを抑えるライニング、安定感◎のビブラムソールなど、現代的な機能も満載だ。1万4300円(ムーンスターカスタマーセンター)
スロバキア《30年代から続く素朴な東欧スニーカー》
NOVESTA[ノヴェスタ]
スター ドリブル
創業当初から続く40sの金型で作るスロバキア製。素朴なヴァルカナイズド製法の趣きを伝え、ポップな色使いやカップインソールなど、現代的なエッセンスも加わっている。1万2100円(ノヴェスタ ジャパン)
《個性豊かな軍用シューズを現代的な使い勝手で楽しめる》
REPRODUCTION OF FOUND[リプロダクション オブ ファウンド]
(左上)ブリティッシュトレーナー(右上)USネイビートレーナー
(左下)フレンチトレーナー(右下)イタリアンネイビーデッキ
同ブランドはスロバキアなどの工場の技術を活かし、世界の軍用靴をアップデートしながら復刻。米国のレトロなデッキ、ミリ色満点の英国、伊の海軍士官靴、華やかな仏のトレーナーなど、個性豊なモデルが揃う。右上/1万4080円。左上/2万5080円。右下/3万8500円。左下/3万580円(アイ ファウンド)
※表示価格は税込み
[ビギン2022年7月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。