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innovator イノベーターのソファ

本間昭光

本間昭光

プロデューサーとして、アレンジャーとして、作曲家として、誰もが口ずさめるヒットソングを数多く生み出してきた本間さんは、大のモノ好き。興味を持ったらとことん!な性格から、あらゆるモノに深い思い入れがあります。そんな本間さんの愛するモノの中から、音にまつわるアイテムにフォーカス。その魅力&エピソードを語っていただく連載、#02は『イノベーター』のソファです!!

#02
イノベーター
ソファ

innovator イノベーターのソファ
1969年創業のスウェーデンブランド、innovator(イノベーター)。ファーストプロダクトのチェア「Stuns(スタンス)」で一躍脚光を浴びる。美しいデザインを追求するのが当たり前だった当時、「カバーリングシステム」と呼ばれる、経年劣化したクッションやカバーの交換を前提したデザインは、まさに革新的と評された。今回のソファは’、90年代~’00年代前半まで販売されていた「boom(ブーム)」の2シーター。上写真は当時のカタログ。

レコーディングスタジオで出会った”疲れない”ソファ

その昔、信濃町にソニーミュージックのレコーディングスタジオがありまして、尾崎 豊さんら多くのミュージシャンがここを利用していました。地下階もあればレストランもある大規模なスタジオで、マイケル・ジャクソンやスティービー・ワンダーのサインが壁に書いてあったりする、いかにも’80年代っぽい優雅さにあふれる空間だったことを覚えています。ミュージシャン同士の交流の場にもなっていて、ボクらも2001年になくなるまでよく利用していました。最後のセッションを行ったのはポルノグラフィティでした。

当時は今と違って、レコーディングに多くの時間が掛かりました。というのもアナログテープを使ってのレコーディングの場合、聴きたいところまで巻き戻すにもキュルキュルキュルといちいち10秒以上待たないといけない。その繰り返しだから、待ち時間がとにかく多いんです。じゃあどうしているかというと、そこにあるソファに座ってゆっくりしているしかない。ボクのお気に入りは地下の『リミックス 3』スタジオ、通称”リミサン”に置いてあった青いソファでした。

innovator イノベーターのソファ

これといった派手な特徴のないソファなのですが、何とも座り心地がよくて、長丁場でも疲れない。座面の深さ、広さ、高さ、固すぎず沈みすぎずのクッション……すべてのバランスなんでしょうけど、しみじみ惚れ込んでしまいまして。シンプルでいて決して退屈でないデザインも、探してパッと出会えるものじゃない。

ちょうど家にもソファが欲しいと思っていたのでスタジオの人に尋ねると、『イノベーター』というスウェーデンのブランドのものだといいます。当時は神宮前のいちょう並木の入口あたりにショールームがあった(現在はありません)ので、大至急行きました。’93年の話です。

事務所設立。マッキー命名で『ブルーソファ』に

ショールームにも同じソファがあって、そのときは16万円くらいの値付けだった気がします。まだ仕事としてアレンジャーを始めたばかりだったのでソファに16万円を出すには勇気がいりましたが、スタジオと同じ青いカバーを選んで買いました。

家に届いたときは嬉しくて、ひたすらゴロゴロゴロゴロしていましたね。スタジオで録音した音源を、くつろぎながら聴き直すのにも重宝しています。アームレストがちょうど枕になって、この塩梅がまたイイんです。

ブルーソファ 本間昭光の名刺

ちなみにボクの事務所の名前の由来もこのソファ。槇原敬之くんに事務所の名前を相談していたときに友人とうちに遊びに来てくれたことがあり、「名前は家に入って一番印象的なモノから付ければいいんじゃない?」となって『ブルーソファ』に決まりました。

槇原くんはホントに多才な人で、名刺のデザインをしてくれたり、事務所に飾る絵を描いてくれたり、いろいろお世話になっています。その絵も青ですし、言われてみればボクが音楽を担当しているアニメ(魔入りました!入間くん)の主人公も青髪がトレードマーク。ブルーにはなにか縁があるかもしれませんね。

飽きの来ないデザインは、総じてシンプル。でも隅々まで丁寧

さておき、ボクはこのソファに出会ってからというもの北欧家具に興味を持ち、デザインの大切さを考えるようになりました。いいデザイン、飽きの来ないデザインは、総じてシンプルなんだけど隅々まで丁寧に作られていて、深みがある。そしてこれは音楽にもいえることで、座り心地のよさは聴き心地のよさに置き換えられます。

何気ない瞬間に心地いいなぁ、と思うことがありますが、それがどうして心地いいのか? 温度なのか光なのか風なのか? 感じとってカタチにして伝えるのが我々の役割だと思っています。

本間昭光

本間昭光(ほんま あきみつ)
1964年大阪生まれ。’88年に「マイカ音楽研究所」に入学。松任谷正隆氏に師事し、作曲アレンジを学ぶ。’89年、上京とともに「ハーフトーンミュージック」に所属し、アレンジャーやサポートミュージシャンとしての音楽活動を開始。’96年に自身のプロダクション「bluesofa」を設立する。

’99年にak.homma名義でポルノグラフィティのトータルプロデュース・作曲を担当。「アポロ」や「サウダージ」等のヒット曲を数々生み出す。2009年には、いきものがかり「なくもんか」の編曲を担当し、その後も「ありがとう」など、多くの楽曲のサウンドプロデュースを担う。2020年にバンダイナムコアーツとともに立ち上げた「Purple One Star」レーベルでは、レーベルプロデューサーを担当。80’sの世界観を完全に再現した第一弾アーティスト、降幡 愛が話題に。2ndミニアルバム「メイクアップ」が12月23日にリリース予定。

降幡愛 makeupジャケット降幡 愛 2ndミニアルバム「メイクアップ」

降幡 愛オフィシャル YouTube Channel
https://www.youtube.com/channel/UCWfhLoV53Rwdc9WGw735IUg

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