特集・連載
文房具(グ)ルメ
愛されるにはワケがある! 有名お菓子のご当地バージョン探し感覚で楽しめる測量野帳
文房具マニア・ヨシムラマリの文房具(グ)ルメ 国内外のブランドがひしめき、文房具大国といわれる我が日本。高級品が威厳を放つ一方で数百円の筆記具がイノベーションを起こすなど、貴賤上下の別のない世界はラーメン店がミシュランの星を獲得するニッポングルメと相似関係にあり。というワケで、文房グルマンのイラストレーター、ヨシムラマリ氏がその日の気分とお腹のすき具合でさまざまな文房具を食リポしちゃいます。描き下ろしイラストとともにご賞味あそばせ! この記事は特集・連載「文房具マニア・ヨシムラマリの文房具(グ)ルメ」#21です。
「書くもの」には、「書かれるもの」が必要だ。とっさにメモを取らなければ!というときに、ペンだけを持っていても意味がない。そこに書くための紙があって、はじめてペンはペンたりえるのである。
デスクについて仕事をしているときなら、すぐ手に取れるところにノートやコピー用紙があって、書くものに困ることはないだろう。問題は、ちょっとした外出や旅行のときである。書くものが必要になるかもしれない。でも、あまり荷物は増やしたくない。そんなときにどんな紙ものを持っていくかは、思案のしどころだ。
アクティブに活動するときに携帯する紙ものとして、私がおすすめしたいのは、コクヨの超ロングセラー「測量野帳」である。
「測量野帳」は1959年に発売され、その歴史は60年以上にもなる。発売の10年前である1949年に測量法が制定され、測量業務が増大したのをきっかけに、現場で働く人の声を反映して誕生したアイテムだと言われている。
測量の現場は、屋外だ。作業を行う人は機器を使って測定した結果を、その場でメモしていく。そのため、立ったままでも書きやすい硬い表紙と、作業着のポケットにも収まる絶妙なスリムサイズがポイントだ。罫線は測量業務に特化した専門的な罫線の他に、発掘調査や野外でのフィールドワークに適した3mm方眼のスケッチ罫がある。
近年では、その特徴が携帯用のメモとしてちょうどいいとあって、測量や調査などの専門的な業務に携わらない、一般の使用者も増えているという。
個人的には、ハードカバーであるがゆえに本棚などに立てられて、保管がしやすいことも測量野帳のメリットだと思う。リング綴じのよくあるメモ帳と比較して束になったときにスペースもとらないし、ページがちぎれないので記録した内容が散逸しにくいというよさもある。
また、価格も税込み264円と比較的お手頃なので、自分のために使いやすくするカスタマイズも失敗を恐れず気軽に楽しめる。私はゴムバンドをつけたり、製本テープを使ってペンホルダーを作ったりと、昔からスケッチ帳兼ネタ帳として愛用している。
測量野帳は、表紙のデザインのバリエーションが豊富であることも、ファンの心をつかむのに一役買っている。コクヨから発売されている定番品のほかに、さまざまな「オリジナル野帳」があるのだ。例えば、美術館や博物館の野帳。文具店や雑貨店などのショップが思い思いのデザインで作っている野帳。また、その土地に行かないと手に入らないご当地野帳、などなど。
遠出した先で、ポッキーやプリッツ、ハイチュウ、じゃがりこなど、見慣れた有名お菓子のご当地バージョンを探すのも旅の楽しみのひとつだと思うが、まさにそんな感じである。
考えてみれば、旅ノートとしても測量野帳は抜群だ。表紙が縦長で硬いのでチケット類を折らずに挟めるし、スタンプを押したり、使った金額をメモしたり、スケッチをしたりと、さまざまな場面で役に立つ。
夏から秋にかけての行楽シーズン。遠足に、旅行にと、ちょっといつもと違うところに冒険に行くときは、おやつと一緒に測量野帳もバッグに詰めてみてはいかがだろうか。
コクヨ 測量野帳
264円
https://www.kokuyo-st.co.jp/stationery/fieldnote/
※表示価格は税込み
ヨシムラマリ
神奈川県出身。子供の頃、身近な画材であった紙やペンをきっかけに文房具にハマる。現在は会社員として働くかたわら、イラスト制作や執筆を手掛けている。著書に『文房具の解剖図鑑』(エクスナレッジ)。