特集・連載
F/CE. 山根敏史さんをめぐる、これからのシン・スタンダードとは #027
100人をめぐる、これからのシン・スタンダード モノを持たない風潮の今、本当に価値のあるモノってなんだろう? 身の丈に合わないモノはいらないし、ファストな使い捨てモノなんてもっといらない! とはいえ一切無駄を省いた生活もなんだか味気ないような……。大切なのは、何を所有するかよりも、どう向き合うかという視点。モノ選びの賢人たちは今、何を選び、どんなライフスタイルを志向するのか? 100人への取材を通じて、これからのスタンダードを探ります。 この記事は特集・連載「100人をめぐる、これからのシン・スタンダード」#27です。
「世界文化遺産のチェアで読書に没頭する」
F/CE. デザイナー 山根敏史さん
仕事に打ち込むために会社内に自分のアトリエを作っちゃったり、モノを手に入れることで自分を追い込むのがクセ。このチェアは読書のために3年前手に入れました。
かの有名なル・コルビュジエが中心となり、1950年代初頭からデザインされた世界文化遺産、インド・チャンディガールの建築群。そこで使うため、建築家、ピエール・ジャンヌレが手掛けたチェアは、今世界で値上がりを続けるヴィンテージなんです。
もちろん、世界で評価されているデザインや希少性も選んだ理由のひとつですが、個人的にもっとも衝撃的だったのはその座り心地。図書館や美術館に置かれたチェアと同系譜のこれ、角張ったフォルムからは想像もつかない長居したくなる掛け心地なんです。
座面に奥行きがあるため深~く腰掛けられて、低めのアームレストは本を読むときに肘を掛けるに絶好の位置。そのうえインド伝統の手工芸によるガッシリした作りで、集中力が高まるベストなポジションをストレスなくキープしてくれるんですよね。
同じモデルでも個体差があるのがジャンヌレのヴィンテージ。違うモデルも含めて数十脚を実際に座って比べてセレクトしたマイベストな一脚は、なかなかの清水買い……。座らないわけにはいきませんよね(笑)。
Pierre Jeanneret[ピエール・ジャンヌレ]
ヴィンテージチェア
コルビュジエのいとこ、ジャンヌレが建築物内で使うべく設計したチェアのひとつ。インド古来のチーク材に籐編みの座面&背面が特徴的。近年人気が高騰し、数十万円~数百万円するヴィンテージも。「PH29」(本人私物)
F/CE. デザイナー
山根敏史(やまねさとし)
1975年生まれ。アートや旅、アウトドアなどさまざまなカルチャーに精通する「F/CE.」デザイナー。自身の会社で北欧アウトドアブランド「ノルディスク」の店舗も運営。北欧繋がりで家具にも造詣が深い。
※表示価格は税込み
[ビギン2021年12月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。